薬剤師は日本中に浪漫を届けたい

現役薬剤師が、薬剤師の転職、仕事、バイトを語るブログ。他スポーツやゲームなど趣味も書きます。

スポーツファーマシストとは?現役薬剤師が解説!

f:id:kikuo1005:20180218215234j:plain

今回はスポーツファーマシストについて、その概要や資格の取得方法、メリットやデメリットをお話します。

現役薬剤師である私は、本資格を取得している為、その経験談も含めて詳細に記載していきます。スポーツファーマシストの資格取得を考えている方は、是非参考にして頂ければ幸いです!

以下、目次となります! 

目次

 

スポーツファーマシストとは?

2009年に日本アンチ・ドーピング機構(JADA)と連携して、公認スポーツファーマシスト認定制度が発足しました。日本薬剤師会とも連携していて、国家資格である薬剤師の免許を持った者が受講出来る、日本アンチドーピング規則に沿った知識を持つ認定資格になります。

公認スポーツファーマシストの活動として、国民体育大会に向けた選手への情報提供や啓発活動、学校教育としてアンチドーピングの情報を介した医薬品使用に関する情報提供が挙げられます。

また、トップアスリートのみに携わる訳ではなくて、高齢化社会に対する健康増進に向けた運動補助、教養を加えた国民の健康を守ることも、スポーツファーマシストが設立された目的となります。

受講者や認定者は年々増加傾向にあり、最近では東京オリンピックやドーピング違反に関するニュースがピックアップされており、活躍の場は次第に広がっています。 

薬剤師の資格を持った方ならいつでもチャレンジする事が可能であり、ハードルが高くない資格の1つでもあります。 

スポーツファーマシストの資格を取得するには?

f:id:kikuo1005:20180218215255j:plain

さて、では実際にスポーツファーマシストの資格を取得するためにはどうしたらよいのでしょうか。以下、時系列順に、資格取得方法について説明していきます。

1.募集受付開始(4月~5月)

4月下旬より公認スポーツファーマシストのサイトから申し込みを行い、指定された締め切りまでに受講料を振り込み、受付を申し込みます。

申し込みは毎年この時期にしか行われませんので、スポーツファーマシストの資格を目指す方は、申し込み忘れのない様に注意しましょう。また、申し込みにはパソコン用のアドレスが必要になりますので、持っていない方は事前に準備をしておいた方が無難です。

申し込み画面には6、7月に開かれる基礎講習会の希望場所を選択する画面があり、東京会場か大阪会場かのどちらかを選択出来る様な内容になっています。

私は東京会場を選択して東京ビックサイトにて基礎講習を受けました。申込にかかる受講料は7400円になり、別途で認定料がかかります。

ゆとりを持った申し込みを心がけましょう!

2.基礎講習会の実施(6月~7月)

募集受付にて東京か大阪のどちらかの会場を選び、指定された日の午前中からおよそ夕方まで、1日中かけてスポーツファーマシストやアンチドーピングについて学びます。

事前に受講票などの配布物が自宅に郵送されますので、忘れずに会場まで持っていきましょう!

東京ビックサイトにて1つ部屋を貸し切り大きなスライドを使用して座学を行います。

会場はとても広かったのですが、私が講義を受けた時は全ての席が埋まっていて隣同士の距離がとても近かったです。スライド文字の大きさは適切で見やすかったのですが、会場が余りにも大きいので、真ん中より後ろに座っていた方は細部までスライドが見れるかどうかという感じでした。

基礎講習では、テキストを元にスポーツファーマシストの概論から、倫理、使命、役割について学びます。また、WADAと呼ばれる国際的な基準や規則の説明もあり、国内外で起こったアンチドーピングの実例の紹介も受けました。

さらに、ドーピングになる医薬品を薬ごとに説明して、現場で扱う医薬品についてもドーピングの対象になる事を学びました。

最も特徴的だったのは、アスリート選手が壇上に上がり、アンチドーピングについて講義してくれた点になります。テレビで見る有名な選手ではありませんでしたが、実績があり、海外の大会でも活躍したことがある選手でした。

その他にも、突然ドーピングに関して問い合わせが来た時に対応出来るように検索するツールの紹介や、質問時間を設けたりしていました。11月~1月に行う実務講習の申し込み方法やe-ラーニングの注意点なども補足として説明を受けました。 

3.実務講習申込受付(11月~12月)

登録したメールアドレスにアンチドーピング機構からメールが送られてきます。

実務講習の申込受付開始の内容で、メールを開いてから数分で作業を行う事が出来ますが、申込期限が短いので、注意してください。

上述した基礎講習会でも、申込忘れがない様に注意喚起していましたが、メールの存在をうっかり忘れると、次のステップに進めないので気を付けましょう!

私はこの期間までアンチドーピングについて、自主的に学んでいませんでした。基礎講習会で行われた内容も、思い出すのに必死なくらい存在事態を忘れていたので少し勉強しなくてはと焦りもありました。

期間を過ぎてしまうと受講出来なくなってしまうので、十分注意して下さい。

4.e-ラーニング、認定申請(12月~1月)

実務講習申込が無事に完了すると、メールがこの時期に送られて来るので、先ずはe-ラーニングとして実務講習を行います。

実務と言っても動画に流れる講義をひたすら聞くというイージーな難易度になっていて、内容も基礎講習会で行われた講義と近い内容でした。

実務講習を終えると、知識到達確認試験をネット上で行います。自宅にいながらでも解答する事が出来ますし、配布されたスポーツファーマシストのテキストを見て解答してもペナルティーは受けません。

選択肢がある中で正しい記載の文章を選択していく試験問題で、間違えても何度も繰り返し問題に挑める設定でした。正直確認試験という事で1発限りの試験を想像していましたが、予想以上に緩い試験であったので驚いた記憶があります。

試験内容も基礎講習会やテキストに沿った内容で問題が作られているので、しっかりと勉強した方には余裕でパス出来る内容です。

上記を決められた期限までに行って、スポーツファーマシストの認定申請を行います。

認定申請も事務所に伺ったりする事はなく、認定料20,500円を指定の口座に振り込み、申請終了になります。知識到達試験が合格しても、認定料を締め切りまでに振り込まないとスポーツファーマシストにはなれませんので十分注意をして下さい。 

5.認定と更新(4月)

いよいよ4月にスポーツファーマシストの認定がメールを通じて発表になります。認定申請をしっかりと行っていれば、晴れてスポーツファーマシストとして肩書を得る事が出来ます。

資格を取得した後は、認定者ログイン画面から自分の薬局でスポーツファーマシストが在籍している事を登録することが出来ます。登録すると日本アンチドーピング機構のホームページから全国のスポーツファーマシストの検索が可能になり、実際に勤め先の住所や連絡先、得意なスポーツ欄など自由に記載出来る様になります。

私は病院に勤めていた事もあり、自分の判断では登録を行いませんでしたが、病院勤務のスポーツファーマシストの絞り込み機能もありますので、一般人でも簡単に検索が出来て、より身近にスポーツファーマシストを感じる事が出来ます。

更新は4年ごとに行われますが、最終年の4年目に更新手続きと、更新料の振り込みが必要になります。学ぶ内容は基本的には同じになりますが、薬の種類などマイナーチェンジが行われて、基礎講習会から知識到達試験を行います。

更新料としては、新規申し込みと同様に合計27900円かかり、更新しなければ資格が無くなるので、注意が必要です。  

スポーツファーマシストの資格の難易度は?

はっきり言って簡単です。薬剤師国家試験の様に日付が決まっていて、ピリピリとした雰囲気の中での試験ではありません。

自分の自由時間に知識到達試験を受けて、合格出来ればスポーツファーマシストになる事が出来ます。決まった期間に知識到達試験を受けるのですが、試験は会場に赴いて行わずに、パソコンがありネットに繋げる環境さえあれば、どこでも受ける事が可能です。

問題の難易度も全く勉強していない私でも、テキストを開きながら問題を解く事が出来ますし、繰り返し問題を解いていれば同じ内容の問題に遭遇するので、正直なところ試験と言えるか分からない程に難易度は易しい印象でした。

1年を通して受講する形になり、実際の勉強時間は10時間程度で試験をパスする事が出来ました。

逆に注意する点としては、振り込みや締め切りの期間が少し短いので、その点さえ注意すれば、比較的簡単にスポーツファーマシストになれます! 

スポーツファーマシストのメリット

f:id:kikuo1005:20180218215313j:plain

スポーツファーマシストの資格には、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下に、具体的なメリットについて記載します。

1.アンチドーピングについて詳しくなれる

スポーツファーマシストを受講すると専用のテキストが受講日に配布されるので、アンチドーピングに関しての規則や、薬物禁止リストが学べます。

私は個人的に「ドーピングって筋肉増強剤だろう」と予想していましたが、その薬物だけが、ドーピングに引っかかる訳ではありません。基礎疾患があり、普段使いしている薬物もドーピングに引っかかる可能性があります。

薬剤師の方でも、薬の成分でドーピング違反になる物とそうでない物は、初見では判断が難しいはずです。テキストの内容も自分自身の知識が増えたと感じますし、1番勉強になった事は、有効成分がドーピングとして引っかかるかどうかのサイトがあるという事でした。

この薬を飲んでも公式試合の検査では陰性になるかどうか、ドーピングとして違反しないかを1発で判断出来るので、自分の中では調べるツールさえ知っておけば問題ないと判断しました。

また、普段調剤している薬と、スポーツ選手との関係性を学べたのも良かったです。当日のスポーツファーマシストの会場では、国際的に活躍したスポーツ選手を招きアンチドーピングについて話してもらう時間が設けられていました。

スポーツの中でもドーピングを起こしやすいジャンルがある事や、スポーツ選手目線での話を聞けた事は、非常に為になったと感じました。

普段の仕事場ではアンチドーピングの知識を使う事は少ないですが、知らない知識を増やせば会話のきっかけにもなります! 

2.アンチドーピングを普及出来る

アンチドーピング機構と提携している日本薬剤師会は、アンチドーピングの実態や危険性を普及するために、学校薬剤師に講演を依頼する事があります。

そのため、地域の薬剤師会でスポーツファーマシストの資格を持っていると、アンチドーピングの講演に関しては名指しでまわってくる事があり、教育者、啓発活動者として貴重な経験を積む事が可能です。

都道府県によってアンチドーピングに力を入れているところもあるので、興味のある方は、地域別の薬剤師会を確認してみましょう!

また、トップアスリートだけでなく、一般の方にもアンチドーピングを普及させたり、アドバイスを行う事が出来ます。

スポーツファーマシストに認定されると、薬局においてスポーツファーマシストが在籍している点、相談が出来る旨を日本アンチドーピング機構のホームページを通じて登録でき、誰でも検索出来るようになります。

一般人でアンチドーピングについて質問したい方はほとんどいませんが、アスリートでなくても、近くに相談出来る拠点がある事は、それだけでも十分普及活動に貢献していると思います。

薬剤師は薬局の看板にアンチドーピングに関して相談出来ますなどのアピールをした方がより他の薬局との差別化を図れるでしょう!

スポーツファーマシストのデメリット

f:id:kikuo1005:20180218215332j:plain

メリットだけでなく、スポーツファーマシストにはデメリットとなる点もあります。以下にその詳細を記載します。

1.活躍出来る場所が少ない

活躍出来る場所と、スポーツファーマシストの資格者の数が大きくかけ離れています。

スポーツファーマシストを目指す薬剤師は増加していますが、それを受け入れる機関が少ないので、資格だけ持っている薬剤師が多いのが現状です。

病院時代にも、私以外にスポーツファーマシストの資格を持っている薬剤師はいましたが、病院内でアンチドーピングに関して活動を行なった事はありませんし、調剤薬局でも固定のスポーツファーマシストが学校薬剤師として活動するくらいで、資格があるのに何も出来ていない薬剤師が多くいます。

東京の基礎講習にて、確信をついた質問をした受講者が居たのを覚えています。「スポーツファーマシストを取得すれば、東京オリンピックのスポーツファーマシストとして参加する事は出来ますか?」という内容でしたが、答えは「受け入れ人数に限りがあるので、答える事が出来ない。」という回答でした。

今になってスポーツファーマシストの募集要項が出ていますが、内容は酷いものです。

私はその時に、企業などに頼らずにスポーツファーマシストとして発信していかなければいけないと感じました。

まだ、アンチドーピング機構が立ち上がって歴史が少ないため、活躍の場が少なくなっていますが、今後は必ず伸びる分野です。今は他に頼らずに小さい事から攻めて、国民の健康意識の向上やドーピングに対しての理解を広めて行くといいかもしれません。 

2.転職の好材料にはならない

スポーツファーマシストの資格を持っているだけでは、転職時の交渉には、ほとんど意味がありません。

コンサルタントも勉強してない訳ではありませんので、スポーツファーマシストが比較的簡単に取得出来て、何を行うのかは熟知している事が多いです。

ファルマスタッフ と、薬キャリ に転職相談した時には給料アップの切り札にはならない、交渉には使えるが需要がなくて難しいとハッキリと理由を添えて教えてくれました。

しかし、転職エージェントによっては好材料とみなしてくれるところもあります。マイナビ薬剤師 ではスポーツファーマシストの資格を用いて実際に何を行なったか、実績として自分が行なった事は何かを聞かれました。

スポーツファーマシストの資格だけでは好材料にはなりませんが、資格を通じて学校薬剤師の講演を行ったのか、相談をして活動をしていたのかを問われた場面でした。

実際に私はスポーツファーマシストとしてアンチドーピング薬の知識について少し詳しくなった程度だったので、転職時における交渉材料として上手く活用する事が出来ませんでした。

持っているだけではスポーツファーマシストは使えませんので、資格取得後は実績を自ら作っていく事が必要です!

まとめ

いかがでしたでしょうか?

薬剤師の資格だけでなく、プラスアルファのスキルや資格を持っていると、周りからは一目置かれる存在になります。

しかし、個人的にスポーツファーマシストに関しては、資格を取ったからと言って特別に優れている薬剤師だとは思いません。

資格を活かして何を成し遂げたかを周りは評価するべきだと感じましたし、それが今後薬剤師には必要な事ではないかと改めて思う事が出来ました。

本記事を読んで、少しでもスポーツファーマシストについて理解を深めていただけたら幸いです。

それでは、また。  

参考サイト

本エントリーを書くにあたり、参考にさせて頂いたサイトは以下となります。

スポーツファーマシストとは | 公認スポーツファーマシスト

 

他、 薬剤師の仕事関連エントリーはこちら!