今回は薬剤師のチーム医療における役割や、それに携わる際の注意点について、まとめていきます。
現役薬剤師である私が、自身の体験談を踏まえて詳しく記載していくので、ぜひ参考にして頂ければ幸いです!
以下、目次となります。
- 薬剤師のチーム医療とは?
- 薬剤師のチーム医療における役割とは?
- 薬剤師でチーム医療に携わるときの注意点!
- 薬剤師がチーム医療に参加することで得られるメリット!
- 薬剤師でチーム医療を行いたい方が利用するべき転職サイト!
薬剤師のチーム医療とは?
薬剤師によるチーム医療は、大きく分けると2つの意味があります。
1つ目は、病院薬剤師が院内で、患者さんを中心に、多職種と連携して、総合的な医療を提供することを指します。
具体的に関わる職種としては、医師、看護師、栄養士、理学療法士、医療ソーシャルワーカーなどが挙げられます。
薬剤師は上記スタッフとチームを組み、薬学的な視点から医療を提供します。
病院の規模や総合病院、専門科によって、チーム編成や数は異なりますが、一例として、以下が挙げられます。
- 感染症対策チーム、救急医療チーム
- 褥瘡管理チーム、医療安全対策チーム
- 緩和ケアチーム
- がん治療チーム
- 栄養サポートチーム、糖尿病チーム
- 口腔ケア・スキンケアチーム
2つの目の、薬剤師によるチーム医療は、調剤薬局、ドラッグストア勤務の薬剤師が、病院と連携を行う「薬薬連携」が挙げられます。
一般的なチーム医療は、多職種と連携を行う医療を示す事が多いですが、薬剤師の職場ごとでも、同じ目的を果たすチームとして、医療情報を提供したり、患者さんをフォローします。
具体的な活動としては、事前に取り決められた簡易的な疑義照会について、問い合わせなしで、処方変更が出来るように取り決めることなどが挙げられます。
また、異なる職場の薬剤師同士で症例検討会や勉強会を開くことも、チーム医療として、同じ薬物治療を共有する大切な試みです。
厚生労働省が2010年に掲げた「チーム医療の推進について」によれば、薬剤師のチーム医療については病院勤務でなければ、遂行出来そうにない内容が列挙されています。
そのため、「薬剤師のチーム医療」については、病院薬剤師が行う取り組みとして、認識している方が多いかもしれません。
しかし、上述したように、チーム医療とは、必ずしも病院薬剤師だけが行うものではなく、患者さんを中心にして、全ての医療従事者が考えるべき行動の1つです。
薬剤師同士が協力し合い、患者さんに適切な医療を提供する行為も、立派なチーム医療です。
薬剤師のチーム医療における役割とは?
上記したように、薬剤師のチーム医療の幅は広いですが、本項では、私が元病院薬剤師であった事もあり、主に病院薬剤師が行う業務に焦点を当てて、説明していきます。
①:医薬品の副作用のモニタリング
薬剤師は起こり得る医薬品の副作用を念頭に考え、多職種に対して情報提供を行い、チーム医療に貢献します。
例えば、他科の薬を大量に飲んでいる患者さんについて、副作用をモニタリングする場合を考えてみましょう。
病院薬剤師はベットサイドで、薬の半減期や血中濃度、年齢や体重を考慮して、患者さんに副作用の説明や、起こった場合の対処法を伝えます。
また、それら注意点について、主治医にも共有しますが、医師が多忙で捕まらない時は、受け持ちの看護師に報告をして、チーム全体で患者さんの副作用をモニタリングします。
医師の診察の前に薬剤師が副作用発現やコンプライアンスを確認する「薬剤師外来」もチーム医療の1つです。
②:医薬品やサプリメントに対しての相互作用の確認
薬剤師は、医薬品同士の飲み合わせや、サプリメント、その他の嗜好品の相互作用をチーム内で共有をしています。
また、相互作用の確認だけでなく、多職種に対して情報共有を行います。
具体的には、医師や看護師さんから、お酒やタバコの嗜好品に関してヒアリング、そして薬剤師は確認事項を電子カルテに記載をします。
さらに、患者さんが良く飲んでいるサプリメントや、一般薬を一覧表にして、病棟の勉強会で多職種向けに伝える事もあります。
サプリメントや嗜好品との相互作用のチェックも、専門知識を有する薬剤師の仕事です!
③:剤型に関する適正化の提案
医薬品における、剤型を提案する取り組みも、チーム医療には欠かせません。
例えば、患者さんは、薬を飲んでいない事実を、医師に隠したがる場面があり、主治医に対しては「しっかりと薬を飲んでいる」と伝える場合があります。
その際に、薬剤師から、飲み薬ではない、同種同効薬の貼り薬の提案を主治医にしたり、服用回数を減らした工夫をしてみたりと、薬剤師が主導し、服用コンプライアンスの改善と、薬物治療を行うこともあります。
他にも、嚥下が困難な方に対して、坐薬の提案や看護師に簡易懸濁法の説明、粉砕調剤をケアマネージャーや主治医に提案をして、最適な剤型や飲み方を提案するのも、薬剤師におけるチーム医療の役割です。
剤型の知識や、薬の商品・種類を多く熟知している薬剤師は、現場からも、患者さんからも感謝されますし、チーム医療には欠かせません!
④:点滴ルート内の配合変化の確認
チーム医療の一端として、薬剤師は注射薬同士の配合変化についても気を配っています。
例えば、病棟にて、看護師から「この薬と、この薬って、一緒に流しても良いんだっけ?」と聞かれたり、「溶解液って生食(生理食塩水)だっけ?」などと、注射薬に関する配合変化に対して、相談をされる場面が多いです。
配合変化が起こってしまうと、ルート内が詰まって、機器が破損してしまったり、薬によっては、効果が減弱してしまう事もあるので、薬剤師は、事前に情報提供を行う必要があります。
また、代替薬の提案や配合変化が起こりやすい一覧表を作成して、多職種に注意喚起を行います。
その中でも、中心静脈栄養の監査は、病院薬剤師だけでなく、在宅医療を行う調剤薬局薬剤師やドラッグストアの薬剤師も関与する仕事になるので、チーム医療として、重要な役割の一つです!
⑤:医師への処方設計支援と提案
薬剤師は処方権を持つ医師に対して、医薬品の処方設計とアドバイスをする役割があります。
その中でも、がん領域、精神科領域、腎機能障害、肝機能障害、妊婦授乳婦、小児領域の薬剤師は、実際に医師と協同で、薬学的な視点で減量を提案したり、最新のエビデンスを提示して、ディスカッションを行いながら、患者さんに適した薬を決定します。
もちろん処方設計支援を行った後も、患者さんに対してフォローやバックアップをチーム全体で行います。
特に、オンコロジー領域では、副作用対策チームなど、更に細かく分かれてチーム編成を行う場合もありますし、薬剤師としても、やりがいがある分野になります!
病態や治療方針などを理解しなければいけないので、非常に難易度が高いです。
⑥:持参薬の確認
入院後の持参薬確認も、薬剤師のチーム医療における大切な役割の1つです。
例えば、病院では、手術予定で入院をした患者さんが、間違って術前中止薬を服用して、手術を延期する事例もあります。
その際に、薬剤師が患者さんに対して、術前中止薬の説明や注意喚起を行えば、入院前の患者さん負担も減りますし、入院後の病棟内トラブルも減少します。
その他には、持参薬を確認してから、薬剤師が医師の代わりに、代替薬提案や代行入力を行って、医師の業務負担を減らす役割も担っています。
結果として、薬剤師が持参薬の確認を行う事で、多職種の業務軽減になり、患者さんが安全で、最適な医療を受ける事に繋がります。
病院薬剤師は当たり前に行っている仕事であっても、間接的にチームのためになっている仕事は実は多いですよ!
⑦:不安定な薬に対しての代行調剤
薬剤師が他の医療従事者に代わり、不安的な薬を調製することも、チーム医療の一環です。
具体的には、薬剤師による抗がん剤のミキシングが挙げられます。
昔は看護師が病棟で抗がん剤を調製後に、患者さんへと投与していました。しかし、現在では、抗がん剤による被爆の観点から、専門的な環境で、取り扱いの慣れている薬剤師が、暴露対策を行いながら、調製をしているところが多いです。
暴露対策の知識がある薬剤師が、不安的な薬を扱う事で、患者さんの汚染を防いだり、病棟にいる全ての医療従事者に対しても、安全を確保出来る役割を果たしています。
その他にも、TPNの混注業務や院内製剤を薬剤師が調製を行う事で、周りの医療従事者の負担を軽減させています!
⑧:医療安全対策チームにおける医療ミスのマネジメント
薬学的な観点から、医薬品の医療安全回避をする事や、リスクマネジメントを行うことも、薬剤師におけるチーム医療の役割の一つです。
病院には医療安全対策チームという、医療ミスの対策をしている組織が存在していて、薬剤師も原則参加しています。
チーム内で起こった事例を基に、どんな状況で、いつ頃に発生・発覚したのか、また、どんな間違え方をしたのかなどを、薬学的な観点から、調査と対策を行います。
実際に、医薬品の取り間違い事故が起こった場合は、薬剤師が医療安全対策チームにいないと、類似名称の薬で間違えたのか、棚の位置は適切だったのか、注意喚起をする対策をしていたのかなど、直ぐに回答を行う事が出来ません。
医療安全対策チームはヒヤリハットなど、実際に過誤が起こっていない場面も、解析をして、病院全体に周知をしています。
⑨:血中モニタリングにおける業務フォロー
薬剤師は医薬品における血中モニタリングを利用して、医師や看護師の業務内容を軽減させる役割を担っています。
特に、抗菌薬やハイリスク薬に対して、患者さんの血中濃度を測定して、医師に適切な処方提案と有効性のフォローを行います。
また、医師だけでなく、看護師に対しても、採血のタイミングを薬剤師から指導をする事があります。
薬剤師が、医薬品の血中モニタリングに強くなる事は、厚生労働省のチーム医療の推進にも、明記されていますし、高度な医療を提供するためにも、なくてはならない役割の1つです!
調剤薬局やドラッグストアでは、TDM(薬物治療モニタリング)を導入していない職場が多いので、病院薬剤師ならではの仕事と言えます。
⑩:臨床知識をチーム内で共有する
薬剤師の仕事内容や、臨床知識を多職種に分かってもらう取り組みも、立派なチーム医療の1つです。
私は病棟に上がった際に、異なる看護師さんから、同じような質問を何度もされる事がありました。
- 点滴速度は合っているか?
- 副作用はいつ起こるのか?
- マックスどれくらいの量を飲める薬か?
など、薬剤師以外のコメディカルが疑問に感じるポイントは、ある程度決まっています。
そして、薬剤師の視点で、多職種に対して教育を行っていくと、医療従事者が同期や、異なるスタッフにも教える事が出来るので、効率的にチームのレベルが上がり、医療の質も良くなります。
具体的には、「薬剤師による服薬指導方法」、「温度や湿度に注意をする医薬品一覧」など、普段良く手に取る薬をベースに、質問をまとめて講習会を実施します。
薬剤師のチーム医療の役割として、医療従事者の質を上げる事も、チームの事を考えた役割です。
薬剤師でチーム医療に携わるときの注意点!
薬剤師としてチーム医療に携わる際に、注意するべき点について、以下説明していきます。
①:ミニドクターにならないようにする
薬剤師の専門性を忘れてしまい、医師ではないのに、患者さんを診断をしたり、処方権を持ったと勘違いしないように、気を付けて下さい。
特に近年では、バイタルサインを薬剤師から行う取り組みも広がっています。
血圧や脈の確認などは、患者さん中心のチーム医療には、意義がある行為ですが、そこから病名を決め付けたり、薬以外に手を出してしまう行為は、チーム医療とは言えないので、注意をして下さい。
中には、薬剤師のエゴで、チームの輪を乱してしまうケースも存在しています。
薬剤師はあくまでも、薬の専門家です。
治療方針を決定するのは、医師の役割であり、薬剤師がチーム医療で求められている事は何なのかを、しっかりと理解をするべきです。
自分本位にならず、医師や他の医療従事者をフォローする気持ちを忘れないようにしましょう!
②:患者さんが主役である事を忘れない
薬剤師に対して、医師や看護師が理不尽な仕事を振ってきたり、患者さんのパートナーから、無理な要望を受ける場面は、往々にしてあります。
また、チームによっては、理学療法士やケアマネージャー、ソーシャルワーカーなど関わる医療者が増えた分、連携がとり辛くなり、業務過多になることも多いです。
しかし、忙しい時ほど、本当に患者さん主体の医療を提供しているかどうかを意識をして、チーム医療に携わりましょう。
組織の言うことは絶対であっても、振られた仕事が患者さんにとって、プラスになるのかを考えるようにすれば、最適な医療やチームワークが見えてくるはずです!
③:業務外の仕事を受け過ぎない
チーム医療という名の、仕事の押し付け合いが発生することがあるため、業務外の仕事は極力受けないように、注意しましょう。
特に、チーム全体の仕事の流れを理解していないと、一定の職種に業務負荷が偏り、疲弊してしまうことが多いです。
実際に私は、病棟業務の加算を毎月どのくらい取れば良いかと計算をしたり、時に上司からノルマを伝えられる事もありました。
仕事を受け過ぎて、キャパオーバーになり、医療の質が低下していないかを常に考える必要があります。
④:自分がいなくても機能するチームかを考える
チーム医療を担う薬剤師は、基本的に1チームに薬剤師1人になるパターンが多いです。
そのため、会議がある日は休むことが出来ないなど、制限を受ける可能性もあります。
しかし、それでは薬剤師の負担が大きすぎるため、代替案や、後進の育成についても、常に考慮しておく必要があります。
また、自分が働けなくなったり、職場を移った際も、チームが滞りなく機能するように、出口の戦略を意識することも重要です。
どんな時でも、機能をするチームなのかを、俯瞰的に考えるようにしてみましょう!
薬剤師がチーム医療に参加することで得られるメリット!
①:専門知識が深まる
薬剤師がチーム医療の一員として参加すると、より専門的な臨床知識を得ることができます。
例えば、栄養サポートチームとして、医師、看護師、栄養士と共にラウンドを行うと、経腸栄養の薬の成分を詳細に質問されるので、その分野について、実践的な知識を得ることが出来ます。
また、中心静脈栄養に関しても、医薬品ごとの特徴や、栄養成分の比較を行うため、専門知識が高まります。
そのため、チーム医療に参加している薬剤師は、認定薬剤師や専門薬剤師など、ある分野に特化した方が多いです。
チーム医療に参加する事で、ストイックに専門知識を学ぶ事が出来ますね!
②:仕事がスムーズに行える
チーム医療はメリットは、各職業がそれぞれの専門性を発揮して、業務軽減に取り組んでいる点です。
例えば、薬剤師が業務繁忙で、副作用モニタリングが出来ない際に、看護師から、患者さんの副作用の発現具合をヒアリングするのも、効率的に仕事を進めるチーム医療と言えます。
また、調剤薬局では、在宅を行っている薬剤師がケアマネージャーさんに対して、患者情報をヒアリングするのも上手な連携です。
チームを組む事で薬剤師としての仕事の導線がスムーズになります!
③:転職活動で有利に働く
コミュニケーション能力が問われるチーム医療の仕事は、転職をする際に、大きなアピール要素になります。
また、チーム医療では、専門的な知識を吸収出来るメリットがあるので、例えば、専門病院からのオファーや、引き抜きも、十分考えられます。
例えば、がん専門薬剤師であった、私の先輩も、他県の病院から、来て欲しいとラブコールを受けた事もありました。
薬剤師の転職サイトを利用する際も、具体的にチーム医療で貢献してきた実績をアピールすると、転職が成功しやすくなります。
薬剤師でチーム医療を行いたい方が利用するべき転職サイト!
①:マイナビ薬剤師
ずっと働ける職場探しを提案してくれる、薬剤師向けの大手転職サイトになります。
コンサルタントは親切で、転職のノウハウを丁寧に教えてくれた点が、好印象でした。
さらに、チーム医療に対しての理解も深く、薬剤師としてキャリアを積む方法を具体的に提示してくれました。
また、チーム医療は病院薬剤師だけと考えているエージェントがいますが、マイナビ薬剤師では、在宅医療を行う調剤薬局のチーム医療の取り組みも把握していたので、その点からも、非常に知見が深いです。
以下、マイナビ薬剤師の評判や利用体験談を記載しているため、参考にして下さい。
転職後のフォローやレスポンスなどの総合力が高く、利用満足度の高いエージェントです。
②:メディプラ薬剤師
病院の求人に強い、薬剤師向けの転職エージェントになります。
メディプラは薬剤師の求人だけでなく、看護師やその他コメディカルの病院求人を扱っているので、病院の内部事情や、口コミを多く把握している点が魅力です。
また、看護師と薬剤師のチーム医療の関わり方も理解しており、その点でも心強いため、病院薬剤師として専門的なチーム医療を目指してたい方にとっては、利用して損はないエージェントと言えるでしょう!
以下、メディプラ薬剤師の評判や利用方法をまとめているため、興味がある方は一読ください。
調剤薬局やドラッグストアについては、求人の質がいまいちなので、気を付けましょう。
③:ファルマスタッフ
ファルマスタッフは、コンサルタントの質が非常に高く、どんな質問にも対しても、適切な回答をしてくれる点が魅力の転職サイトです。
何度でも異なる転職先に見学を行ってから、自分自身で納得出来る求人を探す事が出来るので、失敗しない転職活動を行う事が可能です。
また、病院の求人にも強く、総合病院から介護施設まで、幅広く扱える点も評価が高いです。
実際にコンサルタントに対して「チーム医療に力を入れている病院を希望」と伝えるだけで、科目特化の病院や、実際に専門薬剤師が多く在籍をする病院まで、提示してくれます!
以下、ファルマスタッフの評判について書いているため、参考にして頂ければ幸いです!
まとめ
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!薬剤師のチーム医療について熱く語りました!
チームから期待される薬剤師の役割は、ジェネラリストとしての医薬品知識が大前提であり、薬剤師ならでは視点からの処方設計や、情報共有を積極的に行う事が、特に重要であると、記事を書いて実感しました。
また、チーム医療においては、コミュニケーション能力がとても大切です。
業界が対人業務にシフトしていく中で、薬剤師として多職種との関わり方を、もっとも意識しなければいけないと、再認識することが出来ました。
本記事を通して、少しでも薬剤師のチーム医療について、理解が深まれば幸いです!
それでは、また!