今回は薬剤師が身に付けるべきスキルや、経験について現役薬剤師の私が詳細に説明していきます!
薬剤師として、今後どのように成長していけば良いのか悩んでいる方や、薬学生で、薬剤師になる前にどのようなスキルを磨けば良いのか知りたい方は是非参考にしてみて下さい!
以下、目次となります。
薬剤師が身に付けるべきスキル!
まず、本項では薬剤師が身に付けるべきスキルについて記載します。
それぞれのスキルについて、それを自分が有しているのか、是非じっくりと考えながら読んで頂ければ幸いです!
1.コミュニケーション能力
対人業務の基軸となるスキルであり、全ての仕事において重要視され身に付けるべきスキルになります。
薬剤師業界もAI化が進み、薬剤師はより対人業務へシフトしていく流れにあります。患者さんに薬を渡すだけの時代は既に終わりかけており、例えば、抗がん剤などの高度医療の際に、薬以外の知識をプラスアルファして情報提供しないといけません
しかし、現場では患者さんの怒りのツボを上手に押してしまう薬剤師が少なからず存在しています。
症状を聞く時も、上から目線のタメ口で馴れ馴れしく指導する薬剤師や、考えればわかる症状を複数回聞いてしまったりと、コミュニケーションに難ありの薬剤師は多いです。
これらはまだ序の口であり、対人恐怖症の薬剤師で、人と関わると吐き気がしてしまう方や、1から10以上を教えないと理解出来ない方など様々です。
逆に言えば、身に付けるべきスキルとして、コミュニケーション能力を早期に培っておけば、即戦力として期待されます。
あなたは得意先や医師と、定期的に飲み会などで自ら交流をしていますか?患者さんや職場内のスタッフと上手く付き合っていますか?
薬剤師としては基礎となる会話の真髄を深く考えると、面白い様に前向きに業務に取り掛かれると思います。
これは、将来薬剤師になりたいと思っている方にも必須なスキルです。
2.危険察知能力
薬剤師として身に付けておきたいスキルとして、危険を事前に回避する能力や、先回りして発見する能力が挙げられます。
薬の中には、過量に服用しても副作用が弱い薬と、少しでも多めに服用してしまうと重大な副作用が起こる薬があります。
新人の時は何が危険な薬で、飲み合わせによって危険かもしれないと半信半疑になることが多いかもしれません。経験を積むと次第に熟知していきますが、実臨床を学んだ方が危険察知能力がより磨かれます。
また、薬だけではなく、疑義照会に関しても何か異変に気付く事が可能です。常にアンテナを張っている状態でいれば、いつもと何かが違うと自ら気付く事でしょう。
この、普段と何かが違うと思う感覚は、薬剤師にとって非常に大切なスキルになっていきます。そして、危険察知を意識して働くと、例えば、自分の周りに変化にも敏感に対応する事が可能になります。
イライラしている上司への話しかけるタイミング、辞めたいと思っている医療事務への気付き、新しい患者でクレーマー気質かどうかの判別、ドラッグストア内を怪しく徘徊するお客さんなど、現場で遭遇する危険意識を高める事が出来るはずです。
この能力が欠如していると、重大な事件を起こしてしまい取り返しの付かない事態になってしまう恐れがあります。
私は新人時代に危険を察知するシミュレーションを行える勉強会があったので、参加したことがあります。現場に潜む危険リスクを多職種で検討して、グループ発表を行うという勉強会でした。
コミュニケーション能力と同様、本スキルにの自信のない方は、是非そのような勉強会に積極的に参加してみましょう!
危険察知能力は如何なる場面においても応用が可能な、重要なスキルです。
3.適応力
多くの薬剤師の就職先は保険調剤薬局であり、大手や中規模の薬局であれば、複数の薬局を行き来したり、異動になったりする事があります。
全国勤務のドラッグストアに勤める薬剤師も異動を余儀なくされますし、派遣薬剤師として転々とする働き方では、現場の適応力を求められます。即戦力と置き換えても良いかもしれません。
大手調剤薬局では、新人指導やルーチン業務の体制が統一されていますので、店舗によって働き方の差はそれほど大きくありません。
管理薬剤師の服薬指導方法や、薬歴の記載方法など細かい点が差異になりますが、大手によっては薬歴の記載方法もマニュアルとして統一している企業もあります。
しかし、それにキチンと沿って行っていない店舗もあるので、同じ企業に勤めていても前の薬局では、薬歴の記載方法について何も言われなかったけど、異動先では、細かな変更を指示される事も間々あります。
薬剤師の転職を経験した事がある方も、前の薬局とのズレを比較してしまい、心の中でフラストレーションが溜まってしまい、精神的に消耗してしまいます。
今いる職場が全て正しいと思わずに、現場ごとに臨機応変に対応していかなければ、出来る薬剤師としての評価は得られません。逆に現場ごと、相手に応じて適応力がない薬剤師は、周りから煙たがれる存在になりがちです。
頭でっかちにならずに、多くの事を吸収して、どんな現場にも対応出来る薬剤師は、どこでも重宝される事でしょう。
4.情報収集能力
あなたは全ての抗生物質に対するプロキロを暗記していますか?
良く出る抗生物質の小児量、成人量を詳細に覚えている薬剤師はいるとは思いますが、すべての薬剤師がパーフェクトに丸暗記出来ている訳ではありません。
薬剤師でも薬に関して分からない事がたくさんあります。新人の頃は、抗生物質についての適応、用法用量を暗記しようと奮闘していましたが、大切なのは必死になって覚える事ではなくて、利用者が聞きたい内容に対して正しい答えを用意するという事です。
実際に現場で聞かれる内容は、抗生物質の量ではなくて、飲み合わせであったり、副作用や、飲み忘れた時の対処法などです。薬の量に関しては、薬剤師の頭の中で済ませればいい事であり、アウトプットが必要な内容はより実践的な事柄でした。
抗生物質のプロキロを丸暗記する事は悪くはありませんが、困った時に、どこを調べれば答えが載っているのか、その情報は質が良くて信用できるのかを調べる能力の方が実践的です。
授乳婦に対しての安全な抗生物質はどこを探せば分かりやすく載っているのか、リスクとベネフィットは症状や重篤度によって異なり、答えは1つではないと思っています。
その中で最大限の選択をして、安全で適切な医療を提供するのが薬剤師です。また、引き出しが多ければ多いほど良い訳ではなくて、信頼できるデータを吟味できる能力も大切になります。
正しい情報を拾い上げて還元出来るスキルは、薬剤師にとって是非身に付けたい内容です。
5.認定薬剤師
かかりつけ薬剤師になるための要件の1つとして、認定薬剤師の資格取得が挙げられます。最も有名な研修認定薬剤師制度は、緑の手帳でお馴染みの日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師になります。
正直に申しますと、認定薬剤師は一定の勉強会の単位を貰えば手軽になることが出来る資格です。厳しいテストなどはない事が大半で、受講すれば認定薬剤師になれるので、資格を持っている薬剤師でも、本当に知識があり現場で活かせているかどうかは不明です。
そういった意味では、特に必要ではない資格だと思いますが、最初に出てきたかかりつけ薬剤師が関係してきます。経営的な目線になりますが、かかりつけ薬剤師になり同意を取得して実績を上げると、会社の利益に直結します。
仮に自分が個人薬局の経営者兼、薬剤師であった場合には、かかりつけを取れば取るほど自分自身の利益となって報酬が得られます。そのため、独立志向の薬剤師には必須な資格と言えるでしょう。
また、その他のメリットとして認定薬剤師を取得後に専門薬剤師として、他の薬剤師と差別化を図れる資格の取得にも挑戦出来ます。
今まで以上に認定薬剤師である薬剤師は増えていて、持っている事が普通になりつつあります。大手調剤薬局に3年以上勤める薬剤師は、持っていて普通の時代が、もう目前です。
実践や知識を増やしてより専門的になっていく時代です。そのための基本となる資格なので、薬剤師は持っていて損はないと思います。
薬剤師なら積んだ方が良い経験は?
本項では、さらに踏み込んで、薬剤師ならば積んでいた方が良い経験についてご説明します!
ニッチな経験も盛り込んでいるので、是非読んでみて下さい。
1.接客の経験
コミュニケーションに繋がるスキルでもありますが、挨拶や営業など外に出向けてアクションしていくために必要な経験になります。
営業などの部署にならない限りは、薬剤師は店舗内で外へのアクションを行う機会は多くはありません。そのため、今までは言われる通りに薬局内を守り、与えられた業務をこなしていけば何とかなっていましたが、今後は薬局の競争、生き残りがますます激しくなります。
その中で名刺の交換もした事がない薬剤師や、正しいビジネスマナー、礼儀が全く出来ない薬剤師が多く存在している事は非常に問題だと思います。
薬局経営者や営業職を経験した事がある薬剤師は問題ありませんが、個人薬局や中小薬局に勤める勤務薬剤師は、薬局内の限られたコミュニティだけの接客スキルしかありません。
接客は奥が深く、突き詰めると非常に面白いスキルです。私も接客スキルが上手い薬剤師の背中を追いかけようと努力していますし、そういった薬剤師が役職者に早くから昇格する姿を何度も見てきました。
薬学生から多くのアルバイトを経験して、接客やクレーム対策、営業やビジネスマナーを経験しておくと、薬剤師になってからも一目置かれる存在になるでしょう。
2.統計学の経験
薬学部に入ると、統計学の講義が1コマほど、低学年の時に必須の単位としてカリキュラムの中に組み込まれています。
私は、高校数学の延長ではないか?と思っていて、統計は薬剤師になったら使わないスキルだろうと思っていました。しかし、しっかりと臨床に携わる病院薬剤師や調剤薬局の薬剤師は、統計学を1から学び、正しく理解するべきだと強く思います。
現状ではほとんどの薬剤師は統計学に弱い傾向にあり、製薬会社の持ってくるデータを表面上では理解した気になっているだけで、具体的な説明に反映させる事や、データをヒントに正しく情報を評価出来ている方は少ないです。
私も苦手なジャンルになりますし、病院時代は誰も教えてくれませんので、統計を用いる学会発表のグラフ作りは、猛勉強しました。少しでもコツを掴んでおけば、グラフやデータの見え方も変わっていきますし、論文のアイデアとして、クリニカルクエスチョンを見つけやすくもなるでしょう。
薬学部では講義とテストを行いましたが、もっと臨床にリンクさせた講義内容にして欲しかったと今になって思います。何よりも患者さんにダイレクトに還元出来ると思いますし、統計学に強い薬剤師は少ないので、他の薬剤師との差別化としてメリットがあるでしょう。
臨床に繋げたり、データを正しく評価する力が身に付くので薬剤師として学んでおきたいスキルの1つです。
3.パソコンに関する経験(プログラムなど)
業務内容を人為的に減らす努力も評価が出来る内容ですが、自身でマクロやプログラムを組み、現場の仕事に繋げる力を持つ薬剤師は大変優秀です。
薬品発注や、自動音声プログラムによる薬歴記載はすでにレセコン会社が力を入れていて現場に還元しています。これらは今まで通りに企業に任せた方がいいと思いますが、レセコン会社などが気が付かない臨床的なプログラムを作った薬剤師を1人知っています。
大抵の人は、レセコン会社にもっと臨床に役に立つプログラムを付けて欲しいと訴えたり、意見を言う人が多いと思います。しかし彼は、独自のプログラムを作成して、在宅医療の臨床をスムーズにして会社内で一躍注目を浴びました。
栄養師と相談して現場で役に立つツールの一覧、値を入力すると薬剤師にとって必要なデータを抽出する仕組みを作りました。自動化に成功した例であり、他の薬剤師には出来ないスキルだと思いました。
特に現代の中年薬剤師はパソコンすら毛嫌いしている方が多いように感じます。プログラミングを学ぶ事は少しハードルが高いと思う方には、パソコンのExcel、PowerPointを一通り使いこなせる様になった方が良いでしょう。
パソコンに強くなる事が出来れば仕事の幅が広がりますし、応用して現場に還元出来ると思います。
重要性が高くない薬剤師のスキルや、おすすめしない考え方は?
追加で、本項では、薬剤師として業務を行う上で、あまり重要性ではないスキルや、持つべきではない考え方について説明します。
1.英会話
薬剤師が英語を使う場面として、医療情報を海外論文を要約する時、海外の学会で発表をする時、外国人患者に対して服薬指導を行う時が大まかな場面になります。
薬剤師のスキルとして英語に強くなる事は悪くありません。調剤薬局の中では1週間の海外研修が行われる企業がありますが、実際に患者に説明を行うのではなくて、海外の薬局のあり方や仕事内容を日本と比較して体感するという内容になります。
私はこの研修にあまり意味はないと感じていますし、日本に技術や仕組みを持ち帰った薬局は聞いたことがありません。1週間程度の研修では英会話もリスニングが少し聞き取りやすくなる程度で、相手に上手く伝える能力は、上達しません。
薬剤師が現場で英語を活用する場面は、英語を発信する力ではなく、英語を読み取る力だと思います。最新の医療情報は海外論文で読み取る事が出来るので、英語を話せる事よりも読み取る事の方が大切になります。
服薬指導時には、英語訳の薬情をプリントアウト出来る機能が薬局のレセプトに付いているので、最悪の場合は話せなくても相手に伝わります。
日本内の学会で発表する薬剤師は一定数いますが、海外の学会で口頭発表を行う薬剤師は一握りだと思います。よくたくさん稼いだ後に数年間留学してくるという薬剤師がいますが、帰国した後に業務で活かせている薬剤師はほとんどいないはずです。
海外で薬剤師国家資格の更新など行うなど高い目標を持ち帰国するのであれば、問題はありませんが、英語を話せるだけでは経験として物足りません。
私は薬学生の時には薬学英語をマスターしようと思っていましたが、現場での対人業務で使う確率は低いので、重要度はそれほど高くないスキルと言えるでしょう。
2.転職の際に視野が狭い考え方
国家資格の最大のメリットとして複数回の転職が可能という点です。薬剤師の中には、転職は悪と思っている方は一定数いますが、上手に転職すれば必ずしも悪いものではありません。
しかし、私は転職自体が良くないものだとずっと思っていた人間でした。
若い内は修行であるので、少なくても3年間は新卒から働くと絶対に決めていました。結局は5年間病院薬剤師として働きましたが、今となっては転職をして正解だったと思います。
もし本エントリーを読んでいる方で、現状の職場が、自分が働く環境や自分自身の健康を害してしまう可能性があるのであれば、直ぐにでも考えを変えた方が良いです。
薬剤師は、一般のサラリーマンとは異なり、1度仕事を辞めても薬剤師として再就職する事が容易です。今の時代は働き方改革の動きもあり、働き方が1つではない社会です。
忍耐力を高めて1つの企業に人生を捧げても良いと思いますが、自分自身を犠牲にしてまでこだわる必要はないです。我慢が出来なさ過ぎてワガママになってしまう事はいけませんが、常に視野を広く持ち、転職について前向きに捉えてみましょう。
もし、薬剤師の転職について色々と考えている方は、以下のエントリーにおすすめの薬剤師の転職サイトをまとめているため、参考にして頂ければ幸いです。
3.スポーツファーマシスト
実際に私はスポーツファーマシストの資格を持っていますが、現場の患者さんや、アスリートの方から1度も相談を受けたことはありません。薬局としてもスポーツファーマシストが在籍している薬局として宣伝を行っているのですが、3年間協会側からのアクションもありませんでした。
結論を言うと、形だけの資格になります。
スポーツファーマシストの資格は、2020年東京オリンピックまでに必要と考えて受講しましたが、現在スポーツファーマシストを取得している薬剤師は非常に増加しています。
その背景には、受講してパソコンテストを受けると取得出来てしまうという簡単なハードルである点と、日本中にスポーツファーマシストが浸透していない点、何か資格を取得したいと考える薬剤師の背景が挙げられます。
アンチドーピングに対しては、スポーツファーマシストを運営する管理者から依頼を受けますが、コネクションや実績がないと基本的には招集がかかりません。
おそらくスポーツファーマシストを取得した薬剤師のほとんどは、依頼を受けたことがない薬剤師だと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
薬剤師のスキルは、現状の職場によっても異なるかと思いますが、初心に戻れば、考え方や行う事は一緒だと記事を書いてみて思いました。
今後、薬剤師に求められるスキルは、今よりもハードルが高くなります。それに応えるために、私達薬剤師はより一層様々な努力をし、経験を積まなければいけません。
この記事を見て何かの支えや助けになってくれれば幸いです。
それでは、また。
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