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アンサングシンデレラの感想!現役薬剤師が徹底レビュー!

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今回は現役薬剤師の間でも、話題となっている、マンガ版のアンサングシンデレラの感想やあらすじを紹介していきます。

賞賛されなくても、奮闘をする薬剤師の物語を是非チェックしてみて下さい!

以下、目次となります。 

目次

 

 

アンサングシンデレラとは? あらすじや概要を紹介!

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総合病院の薬剤師として働く、葵みどり・26歳。医師のように頼られず、看護師のように親しまれなくても、今日も彼女は患者の「当たり前の毎日」を守るため、院内を駆け回る!!

称賛されなくてもあなたを支える医療ドラマ!!

引用:コミックゼノン|「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」

アンサングシンデレラは、2018年7月号より月刊コミックゼノンで連載をスタートした、女性薬剤師が主人公の本格派医療マンガです。

著者は荒井ママレさん、医療原案を病院薬剤師である富野浩充が、タッグを組んで制作をしています。

2018年11月20日に単行本が発売開始され、その後、反響の大きさからAmazonや楽天ブックスで品切れになる程の人気となり、SNSでも薬剤師から支持されるコミックとなりました。

タイトルのアンサングシンデレラは「縁の下の力持ち」を意味していて、薬剤師の役割を上手く表現しています。

また、病院薬剤師の仕事を様々な視点から吸収出来る作品になっていて、薬剤師の良い面と苦労している面がわかる正統派の医療マンガになっています。

重版出来を経て、2020年4月にはドラマ化が決まるなど、今ノリに乗っている医療コミックです!

また、マンガとドラマでは主人公である葵みどりの勤務年数が異なったり、同僚の役が少し変わっていたりと違いがある点も見所の1つです。

以下、コミックゼノンのサイトで第一話が無料で立ち読みできるため、興味がある方はぜひ一読を!

 

アンサングシンデレラの面白いポイント!

①:薬剤師の使命がわかる

1日に全国で処理される処方箋およそ220万枚。うち6万枚を超える処方に疑義照会がかけられており、その約70%は処方変更になっている。

命を救うことは出来ない。けれど、医療を確実なものにすることが私達薬剤師の使命なのかもしれない。

引用:「アンサングシンデレラ1巻」より

薬剤師の使命は、上記引用のように、目の前の患者さんに対して適切で安全な医療を提供する事であり、アンサングシンデレラは薬剤師の心構えを振り返る事が出来る作品です。

また、アンサングシンデレラでは「医師が処方を決めた後の患者さんの最後の砦」として、薬剤師の立ち位置をストレートに表現しています。

薬剤師だけが行える疑義照会にも、注目して欲しいですし、薬剤師の仕事がリアルにわかるマンガとして、今後どのようなクライマックスを迎えるのかも、気になるポイントです!

私は、医師も薬剤師も関係なしに、1人の患者さんの事を考えて医療に向き合う主人公の姿勢に胸を打たれました。

 

②:主人公葵みどりの優れた五感

主人公葵みどりは目隠しをした状態で、薬の味を的中させる特技の持ち主です。

アンサングシンデレラでは、その持ち味を発揮して、患者さんを助けるシーンを上手に演出しています。

1巻には、チョコアイスと抗生物質を飲ませる事で、子供に対して、適切な飲み方をフォローするシーンがありました。

また、薬の味だけでなく、糖尿病で使用をする自己注射の匂いを感知して、いつ患者さんが使用しているのかを、推測するシーンも出てきます。

医療従事者の中でも、薬剤師は薬のプロですし、効能効果だけでなく、五感をフル活用して、臨床や他職種を支えていると、マンガから読み取る事が出来るでしょう。

アンサングシンデレラの主役、葵みどりは医師も看護師も気が付かない五感でトラブルを解決していく点が、非常に面白かったです。

 

③:上司である瀬野のキャラクターが良い

主人公の上司に当たる男性薬剤師の瀬野は、現役薬剤師から見ても、周りの医療従事者から信頼されており、何より医療に対するブレない想いがあり、理想の上司だとわかります。

ネットの口コミからは「瀬野さんのような上司が職場にいると良いのに」という声を耳にしますし、アンサングシンデレラの登場人物の中でも、ファンが多いキャラクターの1人です。

また、瀬野の存在が、ミステリアスな印象を与えているのも面白いポイントです。

第1巻で入社当時の過去が明るみになっていますが、なぜ転職を決意して、マンガ舞台である萬津総合病院に入ったのか、不明のまま物語が進みます。

今後、主人公である葵みどりにとって、瀬野はキーマンの1人になるはずですし、マンガを読んでいく中で、瀬野が主人公と、どのように関わっていくのかも、面白さの1つになるでしょう。

いつどのタイミングで瀬野の過去が明らかになるのか、そして、主人公のみどりが仲間と共にどのような成長を遂げるのかが、アンサングシンデレラの見所と言えます。

繊細なタッチから生まれる瀬野の表情にも注目したいですね!

 

④:具体的な薬品名を例に臨床を学べる

アンサングシンデレラは場面ごとに医薬品が多く登場します。

発売中の最新巻まで調べると、9話以外は全ての物語で、薬の名称が出てきます。

内容も現場目線を意識しているので、薬剤師だけでなく、その他の医療従事者も薬について学ぶ事が可能です。

例えば、薬と嗜好品の相互作用の話から、薬の豆知識の解説をしているシーンもあり、薬学のさわりを知れるマンガとしてもおすすめです。

そして、処方箋に描かれている処方例や、HELLP症候群やリフィーディング症候群などの症例と薬を絡めながら、本格的な演出をしていて、学べるマンガとして読める点も魅力の一つです。

薬剤師でなくても、薬学生やその他の医療従事者にとっても馴染みある薬を使用している点も良かったですし、画力の高い薬のイラストにも注目して欲しいです。

その他の医療マンガと比べても、実臨床に沿ったクオリティの高い名作と言えるでしょう!

 

アンサングシンデレラのネガティブなポイント!

①:ドキドキ・ハラハラする展開が少ない

アンサングシンデレラはSFやミステリーなど、非現実的なジャンルのマンガではありません。そのため、読み進めても大どんでん返しのように、ビックリするようなシーンは少なく、1話完結型のストーリーが多めになっています。

リアルな医療現場を表現しているからこそ、伏線が回収しやすい描写になっていますし、次の展開がわかりやすい医療マンガです。

爆笑を期待をして、読んでしまうと、呆気なく読み終えてしまう可能性も高いです。

特に薬剤師が読むと、医薬品の説明や、次にどんな展開が起こるのかをある程度予想出来てしまう点が、やや残念に感じました。 

 

②:病院薬剤師以外の職種が勘違いされてしまうシーンがある

アンサングシンデレラは病院を舞台にして、病院薬剤師を主に描いたマンガです。

しかし、実際の薬剤師が働く職場を見てみると、保険調剤薬局やドラッグストアへの就職率が高く、病院で働いている薬剤師は、そこまで多くありません。

マンガの中でも、深夜遅くまで働いているドラッグストア薬剤師の葛藤が描かれているのですが、捉え方を誤ると、「ドラッグストアの薬剤師=ブラックな環境で働いている」と、偏った見方になり、勘違いを起こしてしまうシーンもあります。

病院薬剤師以外の薬剤師も日々奮闘しています!

 

③:医薬品の専門用語が多い

薬剤師のマンガとして仕方ないかもしれませんが、本格派医療マンガである故に、一般の方にとって専門用語が多い印象を受けました。

薬や疾患に対しては解説を付けて、わかりやすく説明をしていますが、万人受けをするストーリーとは言えずに、退屈に感じてしまう可能性があります。

もちろん、リアルな薬剤師のマンガを描くには、医薬品の名称は必要不可欠な要素になるため、一概にはネガティブなポイントとは言えませんが、気になる方もいるため、本項に記載しました。 

 

アンサングシンデレラの感想!薬剤師が語る!

①:薬剤師の概念を変える革新的医療マンガ

私は今まで、発売している他の薬剤師の漫画を見てきましたが、アンサングシンデレラは世間から薬剤師のイメージが変わる1冊であると感じます。

なぜなら、アンサングシンデレラでは、薬剤師が患者さんを見ているシーンが多く、その他にも、患者さんのご家族に対してもスポットを当てて、医療に取り組む姿勢がわかるからです。

例えば、患者さんが子供を抱っこしながら薬を受け取るシーンですが、薬剤師が薬の説明をする際に「子供を抱っこしている、早めに説明をしよう」など、本当にリアリティを持って細かなところまで描写されています。

また、第2巻の漫画家志望の患者さんの描写では、医療費と生活費の負担を考えて、薬剤師が間接的に経済的なフォローを行っています。

アンサングシンデレラは「家族の日常」にも焦点を当てながら、薬剤師の職能を読者に訴えかける作品です。

 

②:日本の医療問題についてしっかりと取り上げている

耐性菌の問題から患者さんの医療費負担、病院の経営難など、アンサングシンデレラは多角的な視点で、日本の医療問題を提起していると感じました。

特に医療費に関しては、現役の医療従事者や、医療を受ける一般の方が、それぞれの視点で考えを巡らせて、問題が浮き彫りなるように話が進んでいきます。

アンサングシンデレラはただの医療マンガではなく、読者自身が医療問題について、考えるキッカケになる側面もあります。

 

③:自己研鑽をする気持ちになった

アンサングシンデレラは、現役薬剤師や薬学生が勇気付けられる場面が多いのも特徴です。

「処方を決める医師には疎まれ、患者さんには薬を出す窓口くらいにしか思われていない・・・。病院薬剤師の立場って、けっこう下・・・。」

引用:「アンサングシンデレラ1巻」より

と、主人公が薬剤師の仕事に対して、ネガティブに考えているシーンが出てきます。

一方、上司である瀬野は主人公に対して、このような言葉を投げかけます。

「自分で自分の立ち位置決めちまったら、そっから進めなくなるぞ?」

引用:「アンサングシンデレラ1巻」より

私自身も、薬剤師としての、立ち位置を考えさせられた言葉でしたし、全国の薬剤師や薬学生に勇気を与えたメッセージだと思います。

その他にも、アンサングシンデレラのカバー裏には面白い仕掛けがあり、そこには薬剤師しか出来ない「疑義照会」についての法律が描かれています。

「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなけれな、これによって調剤してはならない。」

引用:薬剤師法第24条|厚生労働省

私はカバー裏にこの文を見つけた時に、薬剤師の仕事をもっと世間にアピールするべきだと感じました。

 

④:チーム医療の描写が熱い

「先生違うよ。”薬剤師さん”じゃなくて、薬剤師の葵みどりさんだよ。」

引用:「アンサングシンデレラ1巻」より

この台詞は薬剤師と共に働く看護師が、医師に伝えた会話になります。

このようにアンサングシンデレラには、薬剤師と医師、薬剤師と看護師のコミュニケーションの描写が多く描かれている点も特徴の1つです。

その他にも、主人公の葵みどりは、がん薬物療法認定薬剤師である江林からがん患者との向き合い方を学びます。そこには患者さんと医師だけでなく、看護師や臨床心理士とも話し合う場面も多く出てきます。

アンサングシンデレラでは率先をしてチーム医療を経験する主人公の姿を垣間見る事が出来ます。

 

まとめ

ここまで読んで頂きまして、ありがとうございます!

薬剤師のリアルを描くアンサングシンデレラは、全ての薬剤師が期待をする医療マンガであり、薬剤師としての職務や日本の医療問題についても考えさせられる1冊です。

ぜひ、本記事を通して、少しでもアンサングシンデレラや、薬剤師について興味を持って頂けたら嬉しいです!

 

それでは、また!

 

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